週刊粧業の新年号で若いターゲットに重要なのは「エンタメ感」というお話をさせていただきました。化粧品ブランドである限り、消費者をウキウキ・ワクワクさせることを追求したサプライズアイテムがあるというのは重要なことです。たとえここで儲けがたくさん出ることは無くてもです!
そこで今回は、12月に発売された新商品より、そんなアイデアのヒントになる「楽しさ最優先のエンタメ系コスメ」というヒットの法則をご紹介します。
*****************************************
①キャンディみたいな××
『アナスイコスメティックス アナスイ ドーリーガールキャンディバー』
全3色 各4g 800円 2014年12月4日限定発売
一つ目はキャンディみたいなメイクアイテムです。アナスイの限定コスメはいつも遊び心が満載ですが、ここまで精巧にキャンディ感を追求するとはさすがです。ホリデーシーズンでテンションが上がっているところに、こんなにカワイイものが出てきてしまったらパケ買い間違いなし。お手頃価格で見栄えも話題性も抜群なので、ギフトにもよし、SNSのネタにもよしと、美味しいところだらけ。アナスイは、カワイイものが大好きな女の子たちの心を掴む企画が卓越しています。
*****************************************
②歌舞伎の隈取デザインの××
『一心堂本舗 歌舞伎フェイスパック~寿~』
2枚入り 900円 2014年12月12日発売
お次はユニークな一品、歌舞伎の隈取デザインのシートマスクです。前回出たときはそのユニークさに売り切れになるほどだったとか。ちょっと笑えるデザインと、お正月に向けておめでたい柄のバージョンが新登場です。
アナスイのメイクアイテムも一心堂本舗のシートマスクも、ギフト、お土産にちょうどいい価格でギフトシーズンにぴったりのアイテムです。今、女性誌やWEBのまとめサイトなどでは、ギフト特集が大人気。SNSなどで、贈ったり贈られたりしたものの写真をアップすることも多くなったことも大きな要因です。化粧品は自分が綺麗になるためだけではなく、自分のことをアピールしながら他人を喜ばせる、そんなアイテムが求められています。
*****************************************
③ハーブティーを飲んだ時のような××
『クルーン キーン アトリエ キャンドルミンティッド』
300g 6,800円 2014年12月1日発売
以上2つの例はデザイン命ですが、ベーシックな商品であったとしても、気の利いたキャッチフレーズをつけるだけでもよいのです。
例えばこちらはミントの香りのキャンドルですが、「まるでハーブティーを飲んだ時のような爽やかさ」という訴求をしています。実は、キャンドルの甘くて重い香りは、狭い日本の住宅事情には適さないという不満がありますが、それを解消しながらも素敵な時間をイメージできるという上手い訴求。
贈る人の気が利いたセンスがキラリと光るデザインやフレーズ、この2つがエンタメコスメに必要な条件と言えるでしょう。
*****************************************
★「週刊粧業」にもコラム連載中です!
2015年1月26日発行号の「週刊粧業」にこちらの記事が掲載されました。
今回は「ネーミング」についてお話したいと思います。私自身、商品企画歴が約20年にもなりますが、ネーミングの作業はいちばん頭を悩ませる厄介なものであると同時にいちばん楽しい作業で、新製品が出たらネーミングを欠かさずチェックします。
そこで、今回は9月~10月に発売された新商品より、「直球ネーミングVS乙女ゴコロネーミング」というヒットの法則をご紹介します。
*****************************************
①直球ネーミング 例1
『ミックコスモ ハリーハリー 大人のふたえメイク』
1,200円 10月20日発売
最近増えているのは「直球ネーミング」です。こちらは、まぶたのたるみや三重まぶた、下がった目尻をリフトアップする、大人のための二重メイクコスメ。
いわゆるアイプチは「一重まぶたを二重にする」という日陰の存在でしたが、「もともと二重のまぶたも、二重の幅を広くして外国人やハーフのような目元にする」というニーズで使われるようになって若者層の間では「ふたえメイク」という定番カテゴリーになりました。そこに大人のという直球切り口にしたのは、ありそうでなかった新鮮さです。
*****************************************
②直球ネーミング 例2
『アンペリール Embellir フリソデ』
50g 7,000円 10月20日発売
また、面白い直球系をもうひとつご紹介します。こちらは、二の腕の「フリソデ肉」をマッサージし、バストアップをサポートするマッサージクリーム。
二の腕のぜい肉=フリソデ肉にフォーカスしたアイテムと言うのがおもしろい。にっくき「フリソデ“肉”」というのもインパクトありますね。
余談ですが、この商品の最終目的はそこからのバストアップだそう。「二の腕ほっそり」と「バストにボリューム」という、イマドキのなりたい女子ナンバー1である「色っぽ系」を目指せるトレンドアイテムです。
*****************************************
③乙女ゴコロネーミング 例1
『True Nature シンデレラタイム ブースターセラム ナノクレンジングゲル』
310ml 1,880円 9月22日発売
④乙女ゴコロネーミング 例2
『資生堂 マキアージュ スノービューティー』
25g 6,500円 9月21日限定発売
また、「乙女ゴコロネーミング」も人気です。「True Nature シンデレラタイム ブースターセラム ナノクレンジングゲル」と「資生堂 マキアージュ スノービューティー」は、まるでディズニー映画の主人公のようなストーリー性のあるネーミングです。
前者はメイク落とし・洗顔料・誘導美容液という3つのステップが1品でできるオールインワンクレンジング。
後者はフェースパウダーなのですが、美白有効成分“m-トラネキサム酸”を配合し、メラニンの生成を抑え、つけている間中、シミ・ソバカスを防ぐといった、ハイテクパウダーです。
機能満載の左脳商品だからこそ、頭でっかちにならず、うっとりするような名前をつけてバランスをとるというのは、化粧品の世界ならではのテクニックですね。
*****************************************
★「週刊粧業」にもコラム連載中です!
2014年11月24日発行号の「週刊粧業」にこちらの記事が掲載されました。
弊社は「女性潮流研究所」というトレンド分析のシンクタンクがあり、女性の気分分析を専門に行っているのですが、2011年頃から発生した「すっぴん」「ヘルシー」というトレンドが、今年になって幅広い層に浸透し始めたのを強く感じています。
タレントで言えば石原さとみ・井川遥・神崎恵。ふんわり柔らかくピュアな雰囲気で、男女問わず人気を集めています。
彼女たちのメイクは、ナチュラルな陰影のアイシャドウと、ぷっくりした天然の涙袋に、ツヤはあるけど色味は主張しないリップ。モテに貪欲な肉食系女子の“攻め”とも、冒険をしないコンサバ女子の“守り”とも違う、新しいメイクです。アイライナーで目力強調し、グロスでボリューミーなリップを強調することはせず、自然なツヤと血色感が主役です。
そんなトレンドを受けて、今年は、専用の商品が現れています。そこで、今回は8月~9月に発売された新商品より、「トレンドから生まれた××」というヒットの法則をご紹介します。
*****************************************
①定番商品に血色感・肌の華やかさをプラス
『イヴ・サンローラン・ボーテ ラディアントタッチ オー ローズ』
4,700円 9月12日限定発売
イヴ・サンローラン・ボーテでは、「ラディアントタッチ オー ローズ」など、人気のベースアイテムから、限定で「ローズ」と名のついたものを発売。厚くはしたくないけれど、血色感や肌の華やかさが欲しい、という気分にマッチしたアイテムです。
*****************************************
②ツヤ出し専用のスキンケア
『カネボウ化粧品 ルナソル グロウイングデイクリーム』
35g 5,000円 9月19日発売
こちらは厳選したオイルをブレンドし、メイク前の肌に上質なツヤを仕込むデイクリーム。ファンデーションやハイライトなどメイクアイテムでツヤを出すのではなく、メイク前にスキンケアでツヤを仕込むという新発想は衝撃的です。ファンデーションの下からツヤを忍ばせれば、まるで天然のツヤに見え、素肌そのものがキレイな人という印象を作れそう。
すっぴん風メイクがトレンドの今、絶妙なすっぴん偽装技術が必要なので、もはやメイクアイテムだけでは限界なのかも知れません。素肌そのものの善し悪しがもろに影響してしまうので、スキンケアでのテコ入れが重要視され、このような商品はお助けアイテムとして重宝されそうです。
*****************************************
③口紅なのに「顔色アップ」
『コーセーコスメニエンス エルシア 顔色アップ リップスティック』
全22色 950円 8月21日発売
こちらは「顔色アップ リップスティック」というネーミングに目が止まります。口紅なのに「顔色アップ」と、まるで化粧下地やファンデーションのようなネーミングなのが新鮮で、口紅ひとつで唇の血色から顔色まで明るくというのは新しいアプローチです。
50代以上は若い子のマネをそのままするのではなく、顔色アップでイマドキの顔を手に入れる、ニーズは大いにありそうです。
*****************************************
★「週刊粧業」にもコラム連載中です!
2014年10月27日発行号の「週刊粧業」にこちらの記事が掲載されました。
最近では化粧品のようなコンセプト、ネーミング、パッケージデザインの日用品が続々と登場しています。
そこで、今回は8月に発売された新商品より、「××みたいな日用品」というヒットの法則をご紹介します。
*****************************************
①美白スキンケアのような歯磨き
『セリスティナ シロク デンタルペースト』
100g 1,800円 2014年8月8日発売
まずは、美白スキンケアのような歯磨き。水を付けずに磨く、天然成分使用のホワイトニング生歯磨き粉です。東北大学がホワイトニング効果を証明した「光触媒アパタイト」と、通常の水よりも洗浄力の高い特許取得の「電還水S-100」を配合し、合成界面活性剤は不使用という自然派歯磨き粉なのに、高いホワイトにング力と泡立ちのよい磨き心地を実現したというものです。
「自然派」「生」という表現は化粧品でよく使われるコンセプトであり、「シロク」というネーミングは美白スキンケア的な手法です。女性用に絞った場合「可愛いデザイン」という発想になりがちですが、これはコンセプトにまで踏み込み、一歩進んだ女性ターゲットの捉え方をした新しいオーラルケアといえるでしょう。
女性誌でオーラルケアの特集が目立つようになり、歯のホワイトニングケアは美の必須条件と認識されるようになりましたので、高効果・高付加価値・高価格帯のオーラルケアは、この先活性化しそうなジャンルです。スペックだけではなく、どうやって付加価値をつけるかというところが勝負となりそうです。
*****************************************
②柔軟剤以上香水未満の洗剤
『P&G レノア レノアハピネス ミスティーグリーン&ジャスミンの香り』
600ml オープン価格 2014年8月2日発売
続いて、柔軟剤以上香水未満の洗剤です。「柔軟剤以上、香水未満の贅沢な香り」というキャッチコピーは、「香水の話?ボディシャンプーの話?え?!洗剤の話だったの?」と、化粧品のプランナーに衝撃を与えました。もはや柔軟剤は、季節ごとに新しい香りが出たり、限定の香りが出たり…こだわる女性にとっては、フレグランスに近い位置づけになってきているのです。
レノアから「レノアハピネス」というブランドが出た当初も、そのネーミングに新鮮さを覚えました。それまで柔軟剤は日用品の域を出ず、機能的なネーミング、キャッチコピーだったのに、情緒的な表現になっていたからです。以来、ハピネス=幸せな気分になれるというくくりで、様々な香りをプロデュースしているこのラインは、やはり他のブランドよりも頻繁に香調追加のアピールを行い、過熱している香り柔軟剤市場でも、存在感のあるブランドに育っています。
日用品の企画開発をする方には、化粧品の企画や品質設計の手法を身につけることが必須の時代が到来したのかもしれません。
*****************************************
★「週刊粧業」にもコラム連載中です!
2014年9月29日発行号の「週刊粧業」にこちらの記事が掲載されました。
美容イコール化粧品というのはもう昔のこと。最近では、あらゆるアプローチの美容アイテムが登場しています。
そこで、今回は7月に発売された新商品より、「新しいアプローチの××」というヒットの法則をご紹介します。
*****************************************
①化粧品メーカー発!化粧水感覚のオーラルケア
『ポーラ オーラルホワイトリンス』
500ml 2,800円 2014年7月2日発売
ひとつめは化粧品会社のオーラルケア。歯磨きでは届かない部分も隅々までケアできるマウスウォッシュタイプ。コンドロイチンやヒアルロン酸を配合と、まさに化粧水的感覚です。
昨年から女性誌のオーラルケアの特集が格段に増えましたし、ポーラが春に発売した 大型美容液「サインズショット」は笑顔のための美容液というコンセプトでした。トレンドに合致した発売のタイミングと自社のブランドストーリーが上手く重なり合った商品です。
オーラルケアとしては割高で、大ヒットというわけにはいかないでしょうが、間違いなく顧客やプレスに対して、ブランド価値を高める新製品になっているはずです。このように強いブランドというのは、常に鮮度アップする試みをしているのです。
*****************************************
②自宅用のブラジリアンワックス
『ノンストレス BodyHonee スパワックス』
283g 3,800円 2014年7月4日発売
女性誌の話が出ましたが、もうひとつ爆発的に増えている特集がデリケートゾーンケアです。そのトレンドにぶつけてきたのがこちら、自宅用のブラジリアンワックスです。
「流行っているからデリケートゾーンの脱毛にチャレンジしたい」と思う人は増えていますが、他人に見せるのは恥ずかしい部分なだけに、躊躇している女性がほとんどです。自分で自宅でできるならうれしい!という気持ちに火をつけながら、天然成分100%、60年以上の歴史を持つレシピに基づいて作られているという、バックグラウンドストーリーもターゲットの心を後押ししそうです。
*****************************************
③化粧品メーカー発!ブランドストーリーに基づいた電動洗顔ブラシ
『クリニーク ソニック システム ピュリファイング クレンジング ブラシ』
11,500円 2014年7月11日発売
最後にご紹介するのはこちら、高速・微細な音波振動で、手洗顔では落としきれない肌の奥の汚れを浮き上がらせ、清浄な肌に洗い上げる洗顔ブラシ。電動洗顔ブラシは珍しいものではありませんが、化粧品メーカーからの発売はちょっと新鮮です。
もともと、「美容成分を与える前に、汚れや余計なものを取り除くことが大切」という美容理論で昔から人気なのがクリニークですから、洗顔ブラシの参入は唐突ではなく、考え方はブランドの起源に立ち返っています。前述のポーラのオーラルケア同様、ブランドストーリーに沿った新しいジャンルのアイテムの投入は、ブランド価値創造にも寄与するといえるでしょう。
*****************************************
★「週刊粧業」にもコラム連載中です!
2014年8月25日発行号の「週刊粧業」にこちらの記事が掲載されました。